NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」
ミナさんは3年前の40代、体の機能が失われる神経性の難病であることを医師から告げられます。徐々に会話や歩行が困難になり、何れは胃瘻と人工呼吸器が必要となることを知ります。
ミナさんは自殺を幾度か試みるも、その頃には既に体の自由がきかなくなりはじめてたのか何れも未遂に終わってます。
そこで頼ったのがスイスの安楽死団体です。
「人生の終わりは、意思を伝えられるうちに、自らの意思で決めたい」
そこに登録するも志願者が多いためになかなか事がすすまない。数カ月後にはスイスに行ける体力すらなくなっているかもしれないと焦るミナさんはメールで団体に早い対応を促し、11月にスイスに来るよう返事がきます。
一緒にスイスに向かったのは少し歳が離れた二人の実姉です。(ご両親はおられないようです)
スイスに着いて、団体より改めて意思確認をされるも、その後すぐに安楽死を実行するわけではありません。
改めて2日間の猶予を与えられます。この間に意思が変わることがないか自身と自問自答、もしくは家族との話し合いの場を持たせるためです。
ミナさんにとってもお姉さんにとっても辛い2日間だったかもしれませんが、ミナさんの決意は変わりませんでした。
「最期の日くらい家族だけで過ごさせてあげろよ」と観ていた私は不快に思ったのですが、安楽死を実行する直前にミナさんは電話で妹に別れを告げ、そばにいるお姉さんとも別れを告げるところまでカメラはまわし続けます。
安楽死はベッドに横たわりながら自分で点滴投入を開始させることで実行されます。
ミナさんはお姉さんたちに感謝の言葉を述べ、自分で点滴を投入しました。
「幸せだったよ」
最期にその言葉を残して静かに眠るように息を引き取りました。享年52歳でした。
ミナさんは既に歩行困難で喋りにくそうではありましたが、まだまだ会話もできておられましたし、安楽死についての意思も自分で英語で医師に伝え、サインも自分でされてたくらい普通に生活されておられました。そして彼女は見た目もまだまだ若い。
つまり、「死」からは程遠い健康状態である方が最期の言葉を述べ、自分の意思で死んでいく過程をずっとテレビを通して見ることの衝撃度は相当なものです。こんなドキュメントは過去に見た記憶がありません。
この瞬間までカメラを回されると「行き過ぎ」の不快感より衝撃度が増します。
涙せずには観られませんでした。
番組ではミナさんと同じような病気で人工呼吸器をつけることを選択した50歳の女性の方も取材に応じておられました。人工呼吸器をつけてがんばるという選択についてその女性のご家族は安堵されていました。
もちろん、ミナさんのように死を選ぶのとどちらの選択が良い悪いはあるはずもなく、本人の意思が尊重されるべきであり、それにご家族の理解が得られれば尚更良いということでしょう。
また、改めて言うまでもなく日本では未だ安楽死は認められていません。
それを理由にお姉さんたちはミナさんの遺灰もスイスの川に流されたそうです。
私もミナさんの立場だったら安楽死を選び、そして日本でできないならスイスに行くことになると思います。
私は結構普段から「死」について考えるほうですが(別に自殺志願者でもうつ病でもありません)、この番組を見て更に考える機会が増えることになるかと。
ミナさんがスイスで亡くなったのが昨年11月、それから数カ月後にお姉さんのお二人がミナさんのいない初めての春を迎え、花見をされてるところを取材されてました。
番組終盤でそのようなシーンをインサートしているものの、亡くなってから放送までに半年も期間があったのはNHK内で放送の仕方について相当な議論があったのだと推測されます。
つらい日々の取材に応じたミナさんとご家族、そしてNHKにも敬意を表したいと思います。
ミナさんのご冥福を心よりお祈りいたします。