どちらが没落企業?:CESでパナソニック社長がソニーのテレビを皮肉った件
ラスベガスで開催中の世界最大の家電・IT見本市「CES」。
CESではもちろん日本の電機メーカーもこぞって出展して企業の幹部や社員も現地に飛び、自社の商品のアピールやその反応の確認をします。そして他社の事業や開発状況を確認する場でもあります。
彼らにとって1年で最も大きなイベントといえるでしょう。
「サムスンやLG、ソニーの展示はコネクトというより、過去のテレビを中心にコンシューマー(消費者向け)の世界に戻ろうというトーンが強い。我々は先祖返りはしない」と断言、ソニーなどがテレビを大々的に展示していることを皮肉った。
ニュースサイトで読む: http://mainichi.jp/articles/20170108/k00/00m/020/069000c#csidxbe6adf680e2cbef9872f881cb035a9a
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ソニーはCESで有機ELのテレビを発表、高画質のみならず画面のパネルそのものを振動させて音を出力させるというものでそれを今回の出展の中心としていたようですが、それをライバル会社にバカにされたかたちになります。
誰しも売れるはずがないのは分かってましたが、しかしそれはあくまでも今後の布石のためであって、これから画面の巨大化、コスト削減に向けて開発を進めていくのだろうと思いきや、結局それっきり有機ELの開発をやめてしまったのです。
これにはホンマガックリで当時のソニー(今もそうかもしれませんが)は未来への投資という概念はゼロで、儲からん事業はすぐ廃止ってな感じでした。
「自分たちはもう家庭用テレビみたいな利益の上がらんシロモノはとっとと切り捨てましたよ。もう次のステップに移ってますよ」と言いたいんでしょうが、要はパナはテレビについては大大大失敗の上に逃げただけの話です。
パナソニックは10年ほど前、私の地元・尼崎市の臨海部にプラズマテレビの巨大工場をいくつも建設。世間は明らかに液晶に傾きつつあるのに全く理解不能の設備投資を行ったのですが、工場が本格的なフル稼働を始めた頃には既に液晶テレビがプラズマに圧勝という状態。
あっという間に工場は閉鎖に追い込まれ、パナは巨額の損出を叩き出しました。
例えば三菱電機、一般の人には殆ど馴染みもなく、「三菱の電化製品なんかウチに一つもねぇわ」ってな家庭が多いでしょうが、三菱は基本的に一般消費者を相手に商売しとりません。
彼らが相手にしているのは主に官公庁や企業です。(日立や東芝もそういう事業が多い)
メリットは液晶テレビなんかに代表される激しい価格変動やクルクル変わる消費者ニーズに影響されることなく、安定した利益を得られることにあります。
日本の電機メーカーはこの10年、どの企業も巨額の赤字転落、または黒字復帰などニュースを賑わしましたが、三菱電機は殆ど話題に上がりません。
理由は安定した一定の利益を確保し続けているからですわ。
今や日本の電機メーカーの中で最も優良企業と言っても過言でないかと。
じゃあ、三菱電機がこの10年でドンドン発展していったのかといえば、とてもじゃないがそうとは言えんでしょう。単に他の電機メーカーが没落していっただけですw
そんなわけで、パナソニックはこの事業スタイルに目をつけたという流れ。
パナは車のナビや飛行機内客室の液晶パネルなど、企業相手にモノを売ることで安定を求める方向へシフトしていっとるのですが、私から言わせればこんなのは「攻めの経営」なんかとは程遠く「撤退」以外の何物でもありません。
確かに大企業相手に大きな案件を受注すると儲けも大きいですが、市場相手に爆発的な人気商品を出した場合とではレベルが違います。
極端な例ですが、アップルのiPhoneなんかがその典型でしょう。
市場価格で10万円近くのものが「1時間」に3万4千台も量産されるiPhoneのような商品が企業相手にあるはずもない。せいぜい「月間」で3万4千台ですわw
巨大な一般消費者を相手にしているからこそ大きなリターンがあるのです。
そしてちょっと余談になりますが電機メーカーの開発側に視点を移してみると、一般消費者が相手の場合、その製品の仕様は開発側で自由に設定できます。
・・が企業や官公庁が相手となるとそうはいかない。
仕様は基本的に客先の企業が決めることになり殆ど自由がききません。
なんだったら正式な仕様書を交わしているにも関わらず、それをひっくり返されても最終的には服従せざるを得ない。
極端にいうと「開発」とは名ばかりで相手にいいなりの「雑用係」に等しく、創造性の欠片もない。
そうなると革新的なモノを開発する土壌がない。やりがいもない。
そういう路線へと転換したパナは松下電器時代から他社のマネばかりで何も革新的な商品を世に出せませんでしたが、ますますこれからもつまらん企業へと埋没していくでしょう。
そしてパナに今回バカにされたソニーも迷走している感がハンパでないですが、それでもやはり日本のメーカーで革新的な商品を生み出す可能性があるのは悲しいかな今やこの企業しかないのが現実です。
彼にとっても「SONY」は羨望の的だったのは言うまでもありません。
今やソニーも金融屋が本業かというような状態ですが、製品の作り手としてはパナのように企業相手に逃げるのではなく、あくまで激しい荒波の一般消費者市場で攻め続けてほしいものです。