ROCK CD & DVD BUYER'S GUIDE III

一応、風景写真がメインです

原発事故:全ては想定されていた

福島第一原発の事故については、私はどちらかと言うとあんまり東電ばっかり叩くことについては疑問を感じてまして、東電のみならず、東電にいいなりだった国ももちろん悪いし、広告料に縛られていたのか原発問題を全然取り上げなかったマスコミも悪いし、原発マネー漬けで監視体制がなってなかった地元の人間も当然悪い。
原発に関心がなかった我々日本人全員も遠からず悪かったという認識です。
 
それでも今回の事故、やはり東電さえマトモな見識をもっていれば、事故は避けれたという毎日新聞の記事を2つ紹介したい。
 
風知草:安全を見極める目
東京新聞を元にした記事なんですが、東北電力女川原発は福島第一と同様の津波被害を受けて、何故に無傷に至ったのかという内容です。
もちろん、女川原発の立地の高さが理由ですが、そこには東北電力で副社長などを務めた平井弥之助(1902~86)という先覚者の見識と執念があったといいます。
以下、その概要です。
 

 
東北電力で平井氏から指導を受けた大島達治氏(82)によると、平井氏の真骨頂は「自分の判断で結果責任を負う」使命感にあり、「決められた基準さえ守れば」と安直に考える人間ではなかったという。法令を尊重するが、法令順守が目標ではなく、法令を超えた本質的な課題を徹底して調べぬく技術者、経営者だったとし、「企業倫理とコンプライアンス(法令順守)の関係に似てるけど、本質は違いますよね。企業の社会的責任とは、法律の範囲で罪に問われなければいいということではない」と大島氏は語る。
 
 女川原発が壊滅を免れたのは14.8メートルの高台に建設されていたからであり、福島第一より5mほど高い。
62年に副社長で東電を辞めた平井氏は電力中央研究所の技術研究所長となり、68年に女川原発を設計する東北電力の海岸施設研究委員会に参画。そこで平井氏は津波対策を熱心に説いた。
 14.8メートルを主張したのは平井氏だけ。「12メートルで十分」など、平井説を過剰と見る意見が大勢を占めたが、平井氏の威望、気迫が勝り、東北電力は平井説を採用する。
40年を経て襲来した津波の高さは13メートルだった。
 

 
平井氏のような優れた先見者は東電にはいなかったのか。
東電にはいなかったのかも知らんが、外部の見識者には今回の事故を想定していたものがいて、それを国会などで力説するも完全にスルーされた過去がある。
 
以下は、抜粋ではなく紙面からそのまま引用します。
 

発信箱:すべて想定されていた=福岡賢正(西部報道部)

 原発事故の報道に強烈な居心地の悪さを感じている。その理由を突き詰めていくと、メディアが安易に使う「想定を超えた」という言葉のせいだと思い至る。眼前で今起きている事態は本当に想定外だったのか。

 《最大の水位上昇がおこっても敷地の地盤高(海抜6m以上)を越えることはないというが、1605年東海・南海巨大津波地震のような断層運動が併発すれば、それを越える大津波もありうる》

 《外部電源が止まり、ディーゼル発電機が動かず、バッテリーも機能しないというような事態がおこりかねない》

 《炉心溶融が生ずる恐れは強い。そうなると、さらに水蒸気爆発や水素爆発がおこって格納容器や原子炉建屋が破壊される》

 《4基すべてが同時に事故をおこすこともありうるし(中略)、爆発事故が使用済み燃料貯蔵プールに波及すれば、ジルコニウム火災などを通じて放出放射能がいっそう莫大(ばくだい)になるという推測もある》

 すべて岩波書店の雑誌「科学」の97年10月号に載った論文「原発震災~破滅を避けるために」から引いた。筆者は地震学の権威、神戸大の石橋克彦氏。つまり今回起きたことは、碩学(せきがく)によって14年も前に恐ろしいほどの正確さで想定されていたのだ。

 石橋氏はその後も警鐘を鳴らし続け、05年には衆院公聴会でも同様の警告を発している。電力会社や原子力の専門家たちの「ありえない」という言葉を疑いもせず、「地震大国日本は原子力からの脱却に向けて努力を」との彼の訴えに、私たちメディアや政治家がくみしなかっただけなのだ。

 05年の公聴会で石橋氏はこうも警告している。日本列島のほぼ全域が大地震の静穏期を終えて活動期に入りつつあり、西日本でも今世紀半ばまでに大津波を伴う巨大地震がほぼ確実に起こる、と。
 

 
上の引用元の論文を見てみると、福島第一について警告したというよりも、浜岡原発のことをメインに警告していたようなんですが、それでも福島第一で起こった経緯と見事に重なる。
 
先月の末くらいまで関西では主な企業が関電から節電要請を受けていた。
消費電力の50%を原発に頼ってきた関西は今夏もすぐに節電要請が来るだろうし、それどころかこのまま全く原発が再稼働しないとなると、ついに関西でも計画停電が起こりうる。
私はなし崩し的に一部の原発の再稼働も仕方ないのでは??という立場だが、反対表明している滋賀や京都の知事、橋下なんかのほうがやはり正論なんでしょう。原発マネーで議員も自治体の長も地元住民も毒されている福井の自治体の意見などこの際重要ではなく、それよりも理屈からいって余裕で30キロ圏に入ってる滋賀県の意見を無視することは事実上不可能。そして、その知事である嘉田由紀子氏はそもそも環境問題に厳しい立場であり、信念を持った自治体の長ゆえ、再稼働を容認するかどうかは非常に難しいところ。
 
全く産業に活気のない大阪や関西ゆえに致命的ではあるものの、一度我々も計画停電を経験しないといけないのかもしれません。