ROCK CD & DVD BUYER'S GUIDE III

一応、風景写真がメインです

南相馬:災害ボランティアのクレーム

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夕方、仙台へ向かうバスの時間が迫ってきたので、津波の被災地から原ノ町駅の方向に歩いていた。
すると、前方からやってきた軽トラがクラクションを鳴らす。周辺に車も人もいないので、どうやら私に鳴らしているらしい。男が車内から「止まれ」のジェスチャーを出している。
軽トラを路肩に止めると、薄い色が入ったグラサンをかけた50代くらいの男が出てきた。
 
「何しに来たの??ここで何してるの??」
横柄な口調で話しかけながら私の目と鼻の先まで近寄ってくる。
当然、こちらは既に戦闘モードに入り、集中力を高め周辺の状況を確認する。
「観光でこの辺ぶらついてるんですけど」
 
「そのカメラ、なに??何撮ってるの??」
その時、私は左肩に一眼レフをかけていた。
 
周りに民家もあまりなく、人通りもない。
何かあった場合に助けを求めるのは無理だが、相手は一人。身長は私より低く、体力は私のほうが上と見た。最悪の場合はぶっ倒せそうであることを確認。
 
「この辺の被災地の様子を撮ってるんですけど」
男は首からぶら下げてる身分証明書を私に見せると、
「私はこういうもんなんだけどね、ここで災害ボランティアをやってるんだけど、そういう撮影とか辞めてくれる?」
 
この男の主張は以下のようなもの。
 
ここら目にする一帯だけでも7~80人の方が亡くなっており、津波の被害を受けた家屋を撮ったりするような行為に対して、住民は非常に憤りを感じている。いろんな取材とかも住民は拒否しており、マスコミにも極力報道を控えてもらっている。
貴方(私のこと)のような撮影とかをされると、我々災害ボランティアの者に疑いがかかる。以前にもそのようなことがあり、疑いをかけられて住民ともめるハメになって、活動ができなかったという。
 
「壊れた民家とか撮ってるんじゃないの??」
「いや、全体的な遠景ばっかですけど」
「どんなの撮ってるか見せてくれる??」 
「はぁ??なんでそんなもん見せなあかんのですか?」
さすがにここでワシも怒りがヒートアップしてくる。
 
「そういうの撮ってないなら別に見せれるでしょ」
「そういう問題ちゃうでしょ。何の権限があってそんなこと言うてますの??」
「この辺りをボランティアやってるものとして・・」
「んなもん関係ないでしょ」
 
この男の言ってることはめちゃくちゃで出るとこに出ても私に勝てるわけもない。
この男といろいろやり取りしてる最中に、私も去年東北でボランティアをした話をすると怯みはじめて、とりあえず写真は控えるようにしてくれというので、こちらも了承し、カメラをリュックにしまった。
(既にだいたいの撮影は終わってたので撮るつもりもなかった)
 
確かに倒壊している民家の敷地内に入って、その民家をパシャパシャ撮るなんてのは完全なマナー違反で、人間としてもどうかと思うが、そもそも震災から一年がたった今、壊れたままの民家が放置されてるようなとこはだいぶ少ない。南相馬の私が歩いた周辺に関しては家屋の基礎コンクリートすらあまり残ってないくらいの更地に近い状態が多かった。
 
震災直後の混乱期に物見遊山での撮影は問題だが、まだまだ「被災者の心痛が多少和らいだ」とは到底言えぬ時期とはいえ、それでも一年という月日が経過している。
「公道での撮影がNG」という時期だろうか??
 
この男はマスコミの取材すら地元住民はNGという。テレビとかでこの南相馬津波の被害を見たことがあるか?と聞いてきたが、確かに震災に関しては相当な時間をテレビで見たり新聞で読んだりしているが、殆ど記憶にない。(わずかにはあるが)
・・が、本当に地元はNGを出しているんだろうか??
 
とある新聞記者が紙面で語っていたが、災害や事件での被害者は当然ながら口が重い場合が多く、取材拒否も少なくないが、この東北の被災者に至っては、取材に対して協力的な場合が多いという。
彼はそれを「今回の震災を後世に伝えたい思いがあるのではないか」と分析していた。
 
本当に南相馬津波の被災者が報道関係者や私のような「観光客」を締め出そうとしているのであれば、それは間違いというもんだろう。多くの方に見てもらう、知ってもらうべきであると断言できる。
 
だが、私は地元の住民がクレームを出しているというより、私への態度から察するに、このボランティアの男やその団体に問題があるんじゃないかと勝手に結論づけている。
ボランティア活動は尊いものだが、それでもたかがボランティアである。えらぶる理由もない。
そもそも、ボランティアするのに色のついたメガネなんかするかぁ??
 
原ノ町駅近くにある南相馬の役所、もしくは交番の警察官からこの男の言っている事実を探ろうとも考えたが、時間があまりなく、そもそもそこに労力を注ぐのも馬鹿馬鹿しいのでやめた。
 
 
下の写真は南相馬津波の被災地で見かけた被災者のメッセージ。
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「ありがとう みんながわらいあえるところにします」