ROCK CD & DVD BUYER'S GUIDE III

一応、風景写真がメインです

NHKスペシャル「高速ツアーバス・格安競争の裏で」~ウィラートラベルの生業(2)

(1)からお読みください。
http://blogs.yahoo.co.jp/zeppelin_2/47265209.html

バス会社側の取材対象となったのが「とうりゅう観光バス」。ウィラーの孫請け会社にあたる。間に別の旅行会社が介在しているのだ。
兵庫県加東市の会社で中国自動車道の滝野社IC辺りの会社と思われる。
京阪神の方ならご存知、兵庫県の山間部の街だ。

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この加東から神戸、大阪、京都駅に寄って客を拾い東京に向かう。地元の方なら分かるが、滝野社から大阪までだけでも結構な距離だ。当然ながら東京からの帰りはそのままの逆のルートで客を乗せて走る。往復三連が通常で運転手さんは自宅に帰る時間の余裕もなく、会社で仮眠などをする。自宅に帰るのは月に3~4回ほどらしい。
プライベートな時間が殆どないのである意味、金を稼ぐためだけの生活といっても過言ではない。
それだけの働きづめでも年収は約400万前後らしいことが番組内容で予想された。

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こういう貸切バスの運賃にも運輸局が決めた公示価格というものがある。
それを大きく下回る値段で旅行会社がバス会社に強いているのが現状だ。
先日のあずみ野観光バスの吹田での事故を受けて、大阪のバス会社の労働組合近畿運輸局に「旅行会社に公示価格の厳守を徹底して欲しい」と陳情に行くのだが、運輸局側は「それを徹底するのはバス会社側だ」といって取り合わない。その立場にないから運輸局に頼んでいるにも関わらずだ。
ウィラーの社長にしても「公示価格より下げても安全は保てる」と番組内で公言している。

公示価格より下げても何も法的に罰則はないという全く理解できない規制緩和
このようなろくでもない規制緩和を推し進めたのは小泉政権であり、それを助言してきたのはオリックスの会長。そして、死亡事故を起こしたあずみ野観光にバスをリースしていたのはオリックスの子会社という図式。
オリックスが出資した村上バカファンドの件といい、規制緩和で「ずるがしこいヤツが得をして、生真面目なヤツが損をする世の中になった」という印象が拭えない。

このウィラーという会社とその社長、何が目的で今回のNスペの取材を受けたのかは知らないが、この番組を観てウィラーの商法を賞賛するものなど殆どいないはずで、正直「そんな他人を虐げるようなことまでして金儲けしたいか??」というのが個人的な感想だ。

ウィラーの社長が秘書らしき女や部下を連れて、とうりゅう観光バスに初めて訪れる場面もNHKに取材されていた。
60歳を過ぎたとうりゅうの社長が運賃の是正を求めようと切り出す前に、若い面々のウィラー側は安全面での更なる向上、ネット上で顧客に対してバス会社の評価アンケートを行うってな幼稚な提案など、自分の都合ばかりを押し付ける打ち合わせに終始。その内容には辟易した。


改めて「安ければいい」という考えは捨てたほうがいいと思う次第で、適正価格を大きく下回るものには相当な警戒が必要だ。貴方も私も痛い目をして死にたくなければ尚更である。
それと同時に福知山脱線事故を未然に防げなかった近畿運輸局、この局の怠慢で更なる死者が出るとしたら言語道断であり、今回の番組のようにマスコミや市民からの圧力も相当必要に思える。


番組の終盤で、ウィラーの新入社員を迎えての決算報告のシーンが流れる。
前年度より1.5倍増とかで30万人の輸送達成。シャンパンをあけて社長はじめ社員が大騒ぎで祝杯をあげる。

↓写真中央がウィラーの社長
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一方、とうりゅう観光バス。
安全面を考慮したウィラーは下請けの旅行会社との契約を破棄。
その更なる下請けにあったとうりゅうはウィラーからの仕事がゼロになり、途方に暮れる社長の姿で番組は終わった。

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↑びっしり埋まってた予定表は空白だらけに

追記:とうりゅう観光バスはその後程なくして倒産したとのことです。