ROCK CD & DVD BUYER'S GUIDE III

一応、風景写真がメインです

川井憲次 - ラビリンス~NHKスペシャル「未解決事件」テーマ曲


イメージ 1

NHKの傑作シリーズ「未解決事件」が始まったのは約8年前の「グリコ・森永事件」からでした。ドキュメンタリーとそれの実録ドラマを連日で放送するという構成は斬新で、特にドラマのほうは緊迫感を伴いながら引き込まれる演出と脚本でネットでも高い評価でした。

シリーズは大体年に一本くらいのペースで「オウム真理教事件」「尼崎連続殺人事件」などが取り上げられてその殆どのクォリティは高いのですが、直近では去年放送されたシリーズ7本目「警察庁長官狙撃事件」になります。

この事件はオウムの地下鉄事件と警察による上九一色村のオウム本部への強行突入などとほぼ同時期に発生しており、狙撃犯としてオウム信者が当初逮捕されたのでオウム一連事件として記憶してしまっている人も多いはずですが、実はオウム信者については証拠のないでっち上げの逮捕として無罪が確定しています。

そこで浮上してくるのが中村泰という男です。
この事件を「未解決事件」でNHKで取り上げたのも現在別の事件で刑務所に服役しているこの80過ぎの老人自身から「自分が真犯人である」という内容の手紙がNHKに届いたのがきっかけです。

過去に警官を殺したこともあるこの銃の扱いに詳しい男は本当に真犯人なのか、それとも単にかまって欲しいだけの目立ちたがり屋なのか、頭脳明晰で(中村は東大中退)飄々と警察を翻弄する中村とその中村と長年対峙してきたある捜査員との会話を中心に描かれたドラマですが、その特異な人格である中村を演じたイッセー尾形の迫真の演技が放送直後に絶賛されました。

イメージ 2


前置きが長くなりましたが、シリーズを更に盛り上げるのがこのテーマ曲です。
パトレイバー」などで著名な川井憲次氏はそもそもはギタリストらしいですが、「未解決事件」というなんとも不気味なテーマを取り上げる番組の曲として非常にマッチしていて、おおたか静流の美しくも狂気も内在した歌声と緩急を織り交ぜた壮大なストリングはこれ単独で聴くに値します。過去数々のNHKのドキュメンタリー番組の秀逸なテーマ曲の中でも更に頭一つ飛び出てる感があります。
NHKはこのように才能のある音楽家を見つけ出してはその才能を引っ張り上げる術が確立されているように思うのですが、そのリサーチ能力をはじめさすがと言わざるを得ません。

今年も放送されるであろう「未解決事件」ですが、単なる未解決事件というだけではなく、ドラマ化するだけの情報量があるものとなると、取り上げ可能な事件もだいぶ限定されてしまいますが、今後も世間に忘れ去られた昔の事件を掘り返して視聴者を事件発生当時へと引きずり込んで欲しいところです。



川井憲次_ラビリンス,未解決事件のテーマ