ROCK CD & DVD BUYER'S GUIDE III

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[歌詞・和訳]Pink Floyd - The Great Gig In The Sky(虚空のスキャット)

 
 
”死ぬことを恐れたりしていないよ
これからもそうだろうし、気になんかしない
何故に死ぬことを怖がらなければならないんだい?
そんな理由なんてないよ、君だっていつかはそっちに行くんだぜ”
 
”私は死ぬのを恐れてるなんて言ったことはないわ”
 

 
この曲はリチャード・ライト(キーボード)によるインストなので歌詞はありませんが、この曲が収められたアルバム「The Dark Side of the Moon(狂気)」のあちこちに散りばめられたセリフがこの曲にも2つほど入ってるのでそれを訳しただけですw
 
ピンク・フロイドは「狂気」を制作するにあたり、周辺のスタッフや関係者に対して「金」「死」などいろんなテーマをあげてそれについて語ってもらいアビーロードスタジオで録音。(ポール・マッカートニーからも語ってもらったとの情報があるものの、それがアルバムに収まっていないということはボツにされたということになる)
それをチョイスしたものをアルバムのあちこちにインサートしておるわけですが、この曲では"Are you afraid of dying?"の問いに対する答えを2つ使っております。
1つめはアビーロードスタジオのドアマン(この人の発言はこのアルバムでやたら核の部分で採用されている)、もうひとつはロードマネージャーの奥さんとのこと。
 
もちろん、この曲の土台を作った今は亡きライトの曲自体もいいんですが、やはりなんといってもゲストヴォーカルとして参加したクレア・トーリー(Clare Torry)でしょう。
私は最初にこの曲を聴いたとき、「この女性ヴォーカルの人、こんなん発狂みたいなのをやらされてめちゃくちゃイヤやったやろなぁw」と思ってたわけですが、実際はそんな単純な現場ではなかったようです。
 
エンジニアのアラン・パーソンズのアイデアでライトの曲にヴォーカルを付けることになり、以前に仕事をしたことがあるトーリーを抜擢。
若干25歳のトーリーは彼女にとって大して興味もないピンク・フロイドの連中がいるスタジオに入ったところ、「曲に合わせて即興で歌ってくれ」とオーダーされます。
”Ooh-aah, baby, baby – yeah, yeah, yeah”なんて感じで歌ったところ、「そんなのを歌ってもらうのに君を呼んだんじゃない。もっと音を伸ばして」とダメ出しをされて、そのあとに2テイクを録音。
3テイク目を要求したところ、なんと彼女は高揚しすぎたためか反復性緊張障害が発生して3テイク目を途中で断念。
結局その録音は2~3時間ほどで終わったとのこと。
 
彼女はピンクフロイドのメンバーからいい反応を得られないままスタジオを後にしたのですが、実はメンバーは彼女のヴォーカルに非常に感銘を受けて、3つのテイクからそれぞれをチョイスして曲として完成させます。
 
メンバーからいい感触を得られなかったトーリーは自分のヴォーカルはボツになると思い込んでたようですが、ある地方のレコード店で「狂気」のアルバムを見つけ、そのクレジットに自分の名前があることを知るに至ります。
そしてアナログ盤のA面最後に収められたこの曲はアルバムにとって印象深い曲のひとつとなり、そしてアルバム自体はゆっくり全米チャートを昇っていき、ついにフロイド初の全米1位を獲得、その後750週に渡ってBillboardにチャートインし、世界中の人々に長年に渡り聴き続けられることになります。
 
殆どアドバイスなしに即興で歌った彼女の功績はもちろんすごいのですが、やはりフロイドってのは初対面のゲストからもそういう実力を引っ張り出せる何か訳のわからん力があるんでしょう。
私が知っている限り、世の中で唯一「神がかってる」と言ってもいいアルバムがこの「狂気」なのです。
 
 
 
The Great Gig In The Sky
 
[Interlude]
"And I am not frightened of dying
Any time will do, I don't mind
Why should I be frightened of dying?
There's no reason for it, you've gotta go sometime"
 
[Vocals: Clare Torry]
 
"I never said I was frightened of dying"
 
Writers: Richard Wright, Clare Torry
 
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