ROCK CD & DVD BUYER'S GUIDE III

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「寒い」~ダウンタウン松本人志が流行らせた・作った言葉

稀勢の里横綱昇進のときの口上で感想を聞かれて、「噛んでしまった」と言ってました。

これを聞いて改めて、「もうすっかり日本人が使う単語になったんやなぁ」ってことをしみじみ思いました。
そう、「(言葉を)噛む」という表現を拡げたのはまさしくダウンタウン松本人志です。
 
今や「すべらない話」なんかでしゃべる度に「おもろない」と2ちゃんで叩かれる松本ですが、ホンマ彼はデビュー直後から東京に進出する前後まではすごかった。
ちょっと笑いのセンスがある人間なら誰が見ても一見して「コイツは絶対売れる」と思ったでしょうし、そう思わせる芸人は後に先にも彼以外にいません。
 
番組などで場をまわすのは相方の浜田の役なので彼はそれほど多くは語らないのですが、要所要所に発する言葉がずば抜けてエッジが利いてたんですわ。
要は的確で的を射た発言をするので、それがあっという間に関西から全国へ広がっていくわけです。
 
過去にもこのブログで触れたことがありますが、松本人志が拡めた、もしくは作ったと言われている代表的な言葉・表現は以下のようなものです。
これらの殆どは東京進出までのデビューから10年以内で既に使っていたものです。
 
・噛む
・ドSドM
・寒い
・もっさり
・グダグダ
・イタイ
・ヨゴレ
・パンチが利いてる
・逆ギレ
・ドン引き
・(見てくれなどが)きつい
・かぶってる
・ヅラ
 
例えば、「ヅラ」ってのは業界用語として普通に使われていたのですが、これを一般人に拡めたのは私の記憶では松本です。
 
松本の表現の根底にあるのは調子こいてる、または人気者ぶってる人間に対する冷やな感情です。
例えば見てくれを目立つように金髪にしたりするような芸人を彼は「ヨゴレ芸人」とよくバカにしていました。(今や彼はそのヨゴレに成り果てましたがw)
 
松本は底抜けに明るいタイプでもなく、小中学校で担任を受け持った尼崎の教師も「目立たなかった」と言います。
私も尼崎育ちなのでよく分かるのですが、全くおもしろくもないのにやたら明るく騒ぎ立てる、人気者ぶるヤツってのが大阪や尼崎にやたら多くいます。
こういううざいやつを「面白くない」の一言で片付けるのはどうも物足りない。
しかし、妥当な表現は当時ありませんでした。
 
そこで松本が関西ローカルで言い始めたのが「寒い」もしくは「さぶ!」という単語です。
「寒い」とは「面白くない」と同義語とされがちですが、私から言わせるとちょっとそれは違います。
例えば、笑点大喜利でメンバーが発したネタで滑ったとします。
その時に「寒い」と使うのはちょっとピントがずれてます。
単におもろないだけで寒いとは違う。
 
寒いとはもっと侮蔑の意味が少ならからずあります。
前述した尼崎にいがちなヤツのように「おもろいやろ?」感をさんざん出したあげくに滑ってる人間に対する嘲笑の意が込められてるように思います。
だから、松本が最初にこれを発したのをテレビで見た時に「よくぞ適当な単語を生み出してくれた!」と私は大笑いしながら思ったものです。
 
まぁ日本人でこれほどさまざまな表現・言葉をひろめた人間は後にも先にもおらんでしょう。
毎年のように流行語大賞で全く流行ってないないクソみたいな言葉が選ばれてますが、すぐに淘汰されるのがほとんどです。
そんなのに全く選ばれてない松本の発した過去の表現はこれからもドンドン国語辞典に反映されて、我々も使いつづけることになるんでしょうな。