ROCK CD & DVD BUYER'S GUIDE III

一応、風景写真がメインです

ちーちゃんはちょっと足りない

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ポップな表紙ですが、中身はなかなか重いです。

秋田書店の訳の分からん雑誌に連載されてたたった8話のマンガが、「このマンガが凄い!2015」のオンナ編で1位に選ばれるほどなんで、確かにインパクトのある内容ではありました。
かと言って、「是非皆さんも読んでみてください!」と言いたいかというと、それはちょっと微妙ですなぁ。

主人公のちーちゃんが「足りない」ひとつに「脳みそ」もありまして、そのバカさ加減は中2レベルより相当下なのはいいんですが、この子が起こす「事件」は「ちょっと脳みそが足りない」レベルではなく、全く悪意もなくやったその行為は言葉は悪いが「知的障害レベル」以下です。
その根本部分がどうも解せないストーリーではありますが、これも「お金が足りない」から起因した事件ではあり、親友ナツの心の闇を描くためにはこの流れしか作者にはなかったのかもしれません。

団地住まいで慎ましく生活を送ってるちーちゃんとナツですが、因みにワタシも尼崎の巨大団地で学校生活を送ってましたので、そのビンボーさ加減の厳しさはそれなりに実体験済みです。(今も抜け出せてませんがw)

事件を起こした「頭の足りない」ちーちゃんですが、本人はあっけらかんとしていて難なく切り返していきますが、その親友であるナツの心の闇は結構深くてなかなか深刻なものがあります。
このマンガはちーちゃん中心に描かれているようで、実はナツが主人公みたいなもんです。

今の日本はドンドン貧乏な世帯が増えてきてるので、辛い学校生活を送ってる子どもたちも多いかと思いますが、要はナツを含め我々人間が精神的に落ち込んでいく主な理由のひとつとして「他人との相対的比較」があります。
北朝鮮パレスチナの子どもに比べれば日本に住んでる子どもはミサイルが落ちてくるわけでもないし、食事もそれなりに採れてるでしょうから、大概は恵まれているんでしょうが、そういうことでは「幸せ」なんてもんは全く感じれません。
自分の周辺や関わりのある人間と相対して「自分の立場はどうなのか」ということで、「不幸」と感じてしまうわけです。

「器用に振る舞えない」「他人と比べてつまらない性格」「成績もよくない」「友達も多くない」「○○ちゃんはカレシがいるのに自分はいない」「貧乏なのでスマホもゲームも服も買えない」などなど、周辺の友人たちと比較して勝手に自分を追い込んでいってる心の闇がナツを覆っているわけです。
・・が、実際は片親とはいえお母さんが頑張って働いてくれてるので学校生活は送れてるわけだし、ちーちゃんはじめそれなりに友達はいるわけで、そこまで不自由な生活ではないはずですが、やはりどうしても他人との比較で自分を卑下し、「死にたい」とすら思ってしまう。

このマンガの最後はビックリするくらいあっけなく終わってしまいますが、実際にナツのような性格だと、描かれていないその先は相当厳しいものが待ってるだろうと想像できるので読者は読後にモヤモヤしてしまう。

しかし、人間というのはある程度は変われるもんです。
ワタシも小学生くらいまではナツみたいな性格でしたし、今も根底にはその部分が残ってるかもしれませんが、基本的に他人との相対関係で自分を卑下したりウジウジするような部分は10代の間に排除していったつもりです。
「他人の目」とかを気にしなくなった時点で、多くの悩みは解消されるでしょう。

中2のナツも、もしくは実際に今現在心の闇を抱えている多くの方も「人は変われる」ということを忘れないでいただきたいもんです。