ROCK CD & DVD BUYER'S GUIDE III

一応、風景写真がメインです

[歌詞・和訳]Men At Work - Down Under

 

ダウン・アンダー

 

ぶっ壊れたワーゲンバスでの旅路 (*1)
ヒッピー・トレイルの最中で、頭ん中はゾンビのことでいっぱいさ (*2)
奇妙な女性と出会い、俺に緊張が走った
彼女は俺を連れ出し、朝食をごちそうしてくれた
そして彼女は言った

君はダウン・アンダーの国から来たの? (*3)
そこは女たちは輝き、男たちは略奪者の国
聞こえる?君にあの雷鳴が聞こえるかしら?
逃げなさい、早く隠れるのです

ブリュッセルで男からパンを買う (*4)
彼は6フィート4インチの筋肉モリモリだった (*5)
俺は言った、「俺の言葉を話せるかい?」
すると彼はただ微笑み、そしてベジマイトのサンドイッチをくれた (*6)
そして彼は言った

俺はダウン・アンダーの国からやって来たんだ
そこはビールで溢れ、男たちは吐くまで飲み続ける国だ
聞こえるか?おまえに雷鳴が聞こえるか?
逃げろ、早く隠れるんだ

ボンベイの巣窟で寝泊まりしてる (*7)
顎は緩み、まともに喋ることすらできない
俺はその男に言った、「俺を誘惑しようとしてるのか?
俺が豊かな国から来たからか?」
すると彼は言った

おぉ!お前はダウン・アンダーの国からやって来たのか?
そこは女たちは輝き、男たちは略奪者の国だ
聞こえるか?おまえに雷鳴が聞こえるか?
逃げろ、早く隠れるんだ

(そうさ俺たちは)ダウン・アンダーの国で生きている
そこは女たちは輝き、男たちは略奪者の国だ
(聞け、雷鳴を)聞こえるか?おまえに雷鳴が聞こえるか?
逃げろ、早く隠れるんだ

 


www.youtube.com

 

 

(*1):歌詞では"Kombi"と書かれているが"Kombinationskraftwagen"の略で
フォルクスワーゲン・タイプ2のこと。Wikiによると1960年代後半の米国のヒッピームーブメントの時代には、当時中古で手に入れやすくなっていたT1(第1世代)が若者たちに愛用されたという。MVの冒頭で出てくるバンがそれ。

(*2):”ヒッピー・トレイル”とは元々は60年代から70年代にかけてヒッピーなどの人々がヨーロッパから東南アジア、主にインドとネパールへと陸路で行った旅とそのルートを指す言葉。後にアジア方面まで行けないヒッピーたちのために世界各地に巡礼路が出現。ほとんど大麻を吸う観光客だけが行く巡礼路とも言える。”Zombie(ゾンビ)"はオーストラリアのスラングマリファナの一種を指す。

(*3):"Down Under"は英国などから見て正反対側にあることからオーストラリア(もしくはニュージーランドも含めて)のこと。特に差別的な要素はないらしく、オーストラリア人自身も使うという。(因みに今回の和訳ではそのまま「オーストラリア人」としても良かったかもしれませんが、ちょっとニュアンスが異なってくるので「ダウン・アンダーの国」としました)

(*4):コリン・ヘイがブリュッセル(ベルギーの首都)で会ったオーストラリア人との実体験を元にしているが、ベルギーがmussels(ムール貝)の産地なのでMuscle(筋肉)とのダジャレという説も。

(*5):約195センチ。

(*6):"ベジマイト"はオーストラリアで生産されてる発酵食品。

(*7) :"ボンベイ"はインドの都市で現在はムンバイに改称。"den(巣窟)"はMVのようすからするとアヘン巣窟を指すらしい。

 

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YouTubeのオフィシャルのMVのコメントでも書かれてますが「オーストラリアの非公式国歌」と言われるほどのオーストラリアを代表する曲です。

とりあえずこの曲はMTV時代ならではのMVがおもろいし、曲の意味を掴むにおいても是非とも見てもらいたいところで音だけだと若干物足りないくらいですw

あまりに有名なこの曲ですが、今日まで私はほとんどこの曲の背景とかを知らず、そのコミカルな曲調やMVとは裏腹に結構奥の深い歌詞であったことを今更知りました。

 

78年結成のオーストラリアのロックバンド・Men At Workは82年に世界デビューしますが、いきなりこの曲や"Who Can It Be Now?"が世界中で売れまくります。

とくにこのDown Underは81年11月リリース後、その年の12月に本国オーストラリアでトップになり、翌年82年2月には隣国のニュージーランドでトップに。その後、カナダでも10月にトップ、そしてリリースから1年後の11月に米Billboard Hot 100に76位で初めてランクイン、その後チャートを駆け上っていき、ついに翌年83年1月に全米1位となります。一旦2位に引き下がったあとに更に1位に返り咲いたりしてるんですが、その2位に蹴落とされたときの1位がTOTOの名曲「Africa」だというんですから、80年代の層の厚いなかでの全米1位というのは今と重みが全然違います。

83年のBillboard年間チャートでも4位、その年のグラミーで新人賞を獲得して、2000年のシドニー五輪では再結成したMen At Workがこの曲をパフォーマンスするなど輝かしい歴史を持つ曲ですが、その後にメンバーたちにとって気の毒な事件が・・。

 

2007年のオーストラリアのテレビ番組で「ダウン・アンダーという曲に含まれている童謡は?」というクイズがあり、「Kookaburra」という童謡がフルートのフレーズのところで使われているというのがそのクイズの答えだったんですが、この番組の視聴者たちが童謡の著作権を持つオーストラリアの音楽出版社 Larrikin Musicに電話やメールで連絡、それを知った出版社が2009年に訴訟を起こすことになります。リリースから四半世紀以上経ってからの訴訟で当然Men At Workのメンバーは裁判で争うことになりますが、2011年に最高裁で上告が棄却されて敗訴が確定。

判決は出版社側は2002年からのロイヤリティ5%を受け取るというもので、訴訟で要求された額より大幅に下げられたものの、急に降り掛かった災難にメンバーへのダメージは相当なものだったと推測されます。

特に著作権違反と判断されたフルートのパートを担ったグレッグ・ハム(キーボード、フルート)、彼のDown Underでのフルートのパートは印象的で、MV内でもコアラのぬいぐるみを自分の体にくくりつけたて歩きまわったり、ガムの木の上でフルートを吹くコミカルなシーンがありますがまさかの30年後に著作権違反の確定がくだされ、その判決の翌年2012年にハムは死去しました。(享年58歳)

コリン・ハイ(リードヴォーカル)はその死について「裁判による心労の影響」を示唆しています。

 

歌詞についてはタイトルどおりまさしくオーストラリアについてのものですが、自国に対する若干の自嘲と自国への危機感を歌ったものです。

「女たちは輝き、男たちは略奪者」というのは80年代当時にまだオーストラリア国内で蔓延ってた「女性は金を稼がずに家を守り、男は外で働いて稼ぐ」という古い固定観念を自嘲、また原住民から土地を略奪した歴史のことを意識した部分もあるかもしれません。

MV内では「SOLD」のプラカードを砂漠に突き刺すなどいろんな示唆がありますが、オーストラリアの乱開発や観光局などによる戦略の影響で凝り固まったオーストラリアに対するイメージのまま押し寄せてくる外国人観光客、米国を中心とした娯楽産業の影響で侵食されていく独自の文化、それらをオーストラリアならではの厳しい自然環境である「雷雨」に例え、自国民たちに警告を発しているものです。MVの最後、砂漠の中を運ばれていく黒い棺桶は葬り去られた自国の何か大事なものを象徴しているのかもしれません。

 

つまりこの歌詞の訴えは当時80年代のオーストラリアに限った話ではなく、少なからず日本も含め世界各国においても今日抱えるべき危機感ではないでしょうか。

リリースから30年後にまさかの「著作権違反」という不名誉な判決が自国でくだされたとはいえ、この曲自体はそんな影響など微塵もなく「非公式オーストラリア国歌」の地位は今後も揺るぎないものでしょう。

 

最後に以下、コリン・ハイがこの曲について語ったものです。(Wikiより)

サビの部分は、本当にいろんな意味でオーストラリアが売られていること、乱開発されていることを歌っている。国の精神の喪失を歌ったものなんだ。本当に強欲な人たちによる国の略奪について歌っているんだ。最終的には国を称えるということなんだけど、国粋主義的な意味でもなく、国旗を振り回すような意味でもない。それ以上のものなんだ。

 

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Down Under

 

Traveling in a fried-out Kombi
On a hippie trail, head full of zombie
I met a strange lady, she made me nervous
She took me in and gave me breakfast
And she said

Do you come from a land down under?
Where women glow and men plunder
Can't you hear, can't you hear the thunder?
You better run, you better take cover

Buying bread from a man in Brussels
He was six-foot-four and full of muscle
I said, "Do you speak-a my language?"
And he just smiled and gave me a Vegemite sandwich
And he said

I come from a land down under
Where beer does flow and men chunder
Can't you hear, can't you hear the thunder?
You better run, you better take cover, yeah

Lyin' in a den in Bombay
With a slack jaw, and not much to say
I said to the man, "Are you trying to tempt me?
Because I come from the land of plenty"
And he said

Oh! You come from a land down under? (Oh, yeah, yeah)
Where women glow and men plunder
Can't you hear, can't you hear the thunder? Ah
You better run, you better take cover
('Cause we are) Living in a land down under
Where women glow and men plunder
(Hear, thunder) Can't you hear, can't you hear the thunder?
You better, better run, you better take cover
Living in a land down under
Where women glow and men plunder
Can't you hear, can't you hear the thunder? Oh, yeah
You better run, you better take cover
(We are) Living in a land down under, oh
Where women glow and men plunder
(Yeah, yeah) Can't you hear, can't you hear the thunder? (Yeah, yeah, thunder)
You better run, you better take cover
Living in a land down under (Living in a land down under)
Where women glow and men plunder
(Oh) Can't you hear, can't you hear the thunder?
You better run, you better take cover

 

Songwriter(s): Colin Hay, Ron Strykert