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一応、風景写真がメインです

[3日間断水]和歌山市が抱える巨額の下水道負債と不安な住民サービス

個人的には人間が多すぎてもはや人間が住むべき場所ではないと思っている東京を中心とした首都圏ですが、あと地方都市で実感としてあまりいいイメージがない街があります。

それが突然の「3日間断水発表」で話題の「和歌山市」です。

現在、市内の小売店からは水のペットボトルが消え、大変な状況のようです。

www.wakayamashimpo.co.jp

 

 

和歌山市にあまりいいイメージがない理由は20年ほど前、和歌山市の中心部からはずれた住宅街をとある用事で結構ぐるぐると歩き回ったのがきっかけです。

そのとき、「街づくりに何の計画性も感じられない」と感じたんですな。主に「市道」のことです。これはあくまで個人的な感想なので地元の人は否定するかもしれませんが、やたら道路がぐにゃぐにゃ曲がってる、車が行き交うような結構メインと思われた道路幅が狭く変化する、急に行き止まりが出てくる・・といったかんじ。よそ者だと自分が北に向かってるのか南に向かってるのか分からなくなるほどで、「いきあたりばったりの街づくり」という印象がありました。(私が歩いた区域だけかもしれませんが)

 

イメージが良くないのはそれだけでなく「下水道」です。

和歌山県自体が下水道普及率が低いんですが、和歌山市は県庁所在地にも関わらず昔から下水道普及率が低い。平成29年度末の普及率は39.6%で、大阪や東京なんかは当然99.9~100%、全国平均でも79.3%というんですから、県庁所在地としては異例の低い値です。

参考:都道府県別の下水処理人口普及率~日本下水道事業団
 

全国的にみればバブル崩壊の80年代までに都市部においては大体下水道が普及していたと思われますが、その中でも和歌山市紀の川の治水工事で手一杯だったのかどうか知りませんが1997年当時でも18.1%という低さ。

しかし、バブル崩壊以降において長期低迷する景気にカツを入れるため、90年代に国は地方へのバラマキ政策を徹底します。その際に地方で整備が進められたのが「下水道」です。普及率がまだ低かった地方都市は国の補助金をもとに下水道事業を推進することになります。普及が進んでいなかった和歌山市も例に漏れずです。

 

・・がここからは私の勝手な妄想とかも入りますが、和歌山市の場合は下水道工事が簡単に進まない。それは先にも述べた「道路」です。直線でない、交通量の割に幅員がない、そしてその狭い道路に水道やら電気、NTTなどの管が通っているうえに雑俳水のボックスや直径1000mmのヒューム管が入ってるって感じになると、下水管を通すところがなく、工事は難航します。道路が曲がっていると水道と違って自然流下である下水道は折れ点ごとにマンホールなどが必要になり、狭い道路に既設のインフラが張り巡らされてると、下水道管は更にそれらより深いところに埋設することになるので工法もややこしいことになります。

 

そうやって多額の工費をつかって公道に管を埋設するも、残念ながら和歌山市は人口減少と住民の高齢化という問題を既に抱えていました。下水道本管と民家の排水管を接続する場合、宅内の工事は住民の自腹となるわけですが、住民自身が高齢であることを理由に水洗化に応じない場合が多々あるようです。

国の補助で市内のあちらこちらに処理場を作り、苦労して公道に下水道管を埋設するも住民が水洗化に応じず、料金収入が得られない。そして処理場はその処理能力を活かしきれいまま強い酸に晒されて経年劣化も早く、これらを維持する膨大なカネがまた市の財政を圧迫するという負のスパイラル。

これらを理由に住民サービスも低下しているといいます。

 

参考:

toyokeizai.net

 

今回の「3日間断水」はあくまで水道なので下水とは別ですが、埋設管の状態調査や古い管から新しい管への布設をする余裕は市の財政にないんでしょう。抱える負債と全く無関係ではないと思います。

市側のアナウンスによるとφ800mmという巨大な本管の漏れを想定して「3日間」という断水を想定しているそうですが、その枝のφ150mmのほうから漏れている可能性も高いらしく、その場合は断水は短くなるようです。

市の担当者、現場の皆さんも寒い中大変でしょうが、断水期間が少しでも短くなればと心から願うばかりです。

 

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市民の5分の1が影響するという広大な断水地域

 

国のバラマキで過剰に下水道事業を推進し、その維持管理で疲弊しているのは和歌山だけではありません。今後、全国各地で劣化した上下水道の埋設管の破損による道路陥没は頻発するでしょう。

それが極端な人口減少と高齢化、四半世紀も景気が低迷する斜陽日本の現実です。

和歌山市の断水は決して他人事ではありません。

 

20日未明、掘削により枝管からの漏水であることが判明し、断水することなく工事ができたようです。