[M-1グランプリ2019]お笑い賞レースと関西人
30年ほど前のある日曜日の夜中、ラジオ大阪「ぬかるみの世界」で新野新(在阪作家)が笑福亭鶴瓶にある愚痴をこぼしてました。
その日は関西でも屈指の漫才賞の授与式が生放送であったんですが、受賞者でこれほど喜ばなかった芸人はかつていなかったというんですな。選考委員の新野新からすると与え甲斐がないということなんでしょう。
受賞者はまだ20代のダウンタウンでした。
まぁなんせ当時のダウンタウンはお笑い芸人として嘗て見たことがない(というかそれ以降も見たことがない)カリスマ性すら感じさせる存在だったため、あらゆる関西のお笑いの賞レースは総なめでした。彼らは当時非常に尖っていたので「自分たちよりお笑いのセンスもないオッサン連中が選考した賞など価値もない」とでも思っていたに違いありません。
賞レースというものに大した価値を見出してなかった彼らなので、「M-1」のようなお笑いに順位をつける賞レースへの批判もM-1審査員の立場であるダウンタウン松本は理解しているはず。それでも彼は敢えてその役を買って出て、そして在阪の賞レースなんかとは比べ物にならない盛り上がりと威厳を放った「M-1」という賞レースを維持しておるわけです。
去年はポンコツ芸人連中がM-1直後に審査員の上沼恵美子を女性蔑視の罵倒をSNSでして問題になりましたが、その後に上沼恵美子が審査員を辞退する旨の報道が流れます。
そこで松本は上沼の在阪番組に今秋ゲストとして出演、番組中に審査員の継続を要請するとともに「上沼さんが出ないのなら僕も辞めます」とまで言って懇願しておりました。
ダウンタウンも若くして天才ぶりを発揮した異例のコンビですが、上沼恵美子もまた海原千里・万里としてなんと10代の若さで女性漫才師として活躍していた天才です。(それをわかってないバカ芸人が関西にいるのがビックリですが)女性芸人でこんな存在は後にも先にもいないでしょう。年齢はさんまや紳助と同年代ですが、なんせ高校生時代から活躍していたので芸歴は長く紳助も一目置く存在でした。
*ただし、二十歳そこそこで結婚後は一時引退していたのでさんまや紳助に対してあくまで低姿勢です
その非・吉本であり、今も在阪で活躍している上沼が審査員としていることでM-1の威厳が保たれることを松本は良く知っているのでそこまで懇願しているに違い有りません。
まぁ昨日放送されたM-1ですが、私なんかはM-1放送日は基本的に何も予定をいれずに放送に備えるくらいの気構えで毎年欠かさず見てますが、関西にはそういう輩が多いはず。関東ではあまり視聴率は高く有りませんが、関西では20%を超えるのも珍しくありません。少なくとも私にとっては冗談抜きでクリスマスや正月、我がの誕生日なんか霞むくらいのビッグイベントですw
そこまでにないにしろ、お笑いに対して貪欲な人間だらけの関西という土壌ゆえ、M-1で関西勢が強いのは吉本のヤラセではなく至極当然のことでしょうな。
M-1が第10回を迎えたときは数字も下がり気味で盛り上がりもかけていたのですが、それを察知してか紳助はM-1を終了させます。それから数年後に再び復活したわけですが、またも盛り返してきた感があります。
昨日放送の第15回は初出場が10組中7組の割には盛り上がりまして、いつも放送後はネット上で批判の多いM-1ですが、「過去最高におもしろかった」「見て良かった」みたいな意見が結構飛び交っています。確かに全体的なレベルは非常に高かったです。
漫才のテクニックでいうとかまいたちや和牛が圧倒的にうまいんでしょうが、やはり常連ゆえのインパクトが薄れてしまって気の毒な面もあります。上沼が他の出場者に対する意見を求められているときに突然和牛を罵倒しはじめたのもめちゃくちゃおもろかったのですが、彼女が和牛を愛するゆえであってネットでは肯定的な意見が多いようです。
私も知らなかったミルクボーイが優勝しましたが、身振り手振りのコント形式の漫才をするコンビが多い中でミルクボーイの場合はネタが秀逸だったことが際立ちました。
彼らの昨日のコンフレークネタは文字に起こして読むだけでも十分におもしろいはずです。それほど優れたネタでした。
ただ2本目が同じようなネタだっただけに、松本がかまいたちを選択したのもわかりますし、いずれにしても決勝に残った3組はどれもおもしろく非常に楽しめました。
今年初めてテレビで漫才を披露したというほど露出が少なかったミルクボーイがこうして一気に脚光を浴びるのもM-1ならではの醍醐味です。
5040組の出場者の皆さん、そして半年かけて全国で予選会を行ってきた吉本興業を中心としたスタッフの皆さんにも感謝しつつ、来年のM-1にも今年みたいな盛り上がりを期待したいところです。
追記: 「M-1グランプリ2019」の視聴率は関東で17.2%、関西で26.7%でした