ROCK CD & DVD BUYER'S GUIDE III

一応、風景写真がメインです

湯浅誠:受給者だけに留まらない「生活保護費切り下げの影響」

私は湯浅氏が主導していた「年越し派遣村」とかの影響でええかげんな生活保護受給者が増えたのではないかと思っているので、あんまり彼を支持する立場ではない。
・・ですが、私は彼を尊敬しているし、彼の発言は傾聴に値すると思っております。
 
ちょっと湯浅氏の生い立ちに触れたい。
彼には筋萎縮性の障害がある3つ上のお兄さんがおられます。
湯浅氏が小学校のころ、養護学校から帰ってくる兄を迎えに行くわけですが、兄はいつも人目を避けて裏道を行きたがる。その意思と反してある日、湯浅氏は「(世間を)見返してやりたい」という意図から表通りへ繰り出して車いすを押して帰るも、兄は帰宅後、母に「もう誠はこなくていい」と訴えたという。
当時はガンダム全盛期で、その再放送をやってる時間の途中で兄を塾まで連れて行ってやらねばならず、「兄を恨めしく思った」と正直に語っている。
 
お兄さんを世話するボランティアの方々との交流が湯浅氏が初めて接したボランティア活動というものだったわけですが、お兄さんの存在が湯浅氏の人生に大きく影響しているのは間違いない。彼は東大大学院中に貧困層の援助活動を本格化させ、結局退学する。
もしそのまま大学院を出て、官僚なり一流企業なり就職すればエリート人生間違いなしだっただろうにも関わらず、それを投げ打ってギリギリの生活の中で活動を続けて現在に至るわけで、本当に頭が下がる。
 
さて、その湯浅氏が間もなく実施されるであろう生活保護の見直しについて、先日紙面上で語っておられたので紹介します。(毎日新聞 1/25)
 

 
彼は冒頭で以下のように語る。
生活保護を受けている人たちは、ちょっともらい過ぎではないか」と問えば、7~8割の人が「そうだ」と答えるだろう。では、「生活保護を受けていない年収200万~300万の低所得者に限って負担増を求めるのは?」と聞いたらどうだろう。やはり7~8割の人が「とんでもない」と答えるのではないだろうか。(中略)実は、二つの問いは聞き方が違うだけで、同じ話だ。
 

どういうことか。要は生活保護費を下げるということは、「国民生活の最低ラインを下げる」という意味であって、生活保護受給者だけに影響は留まらず、多くの低所得者の世帯に影響を与えるという。
 
例えば、「就学援助制度」。
年収200万~300万円の子育て世帯はあらゆる面で支援を受けており、中学校の場合は年に10万円を超えるという。生活保護を受けていない141万人の子どもが利用している。
その対象者は「生活保護より10%高い世帯まで」などの規定を設けており、約3万~7万人の子どもが対象から外れるという。
 
また同様の低所得世帯では住民税を免除されている人たちがおり、その数はなんと全国で推計3100万人にも上る。この基準も生活保護費を基準に決定しているらしく、3100万人のうちのどれだけ影響を受けるか不明ではあるものの大勢の世帯に関わると予想される。
年収300万以下の世帯で、「生活保護費はもらい過ぎ」と主張している人たちがいるならば、それが自分たちにも影響しかねない事態を覚悟した上での発言か疑問だ・・と湯浅氏は語る。
 

 
先日、ある報道番組で低所得者向けの集合住宅にて生活保護で生活している40代の男性がインタビューを受けていた。部屋はカーテン一枚で2つに区切られ、その向こうでは別の貧困者が生活している。その男性は20代の頃、ゲームソフト会社で働いていたといい、年収は4000万ほどあったという。ちょっと眉唾モノの年収の額ではあるものの、とんでもない高給であったのは事実と思われ、その彼も精神的な病にかかり、結局生活保護受給者に至った。
 
要は家族の離散、病気・怪我などで自分が死ぬまでに生活保護受給者になる可能性は多分にある。
生活保護受給者にはパチンコをやったり、最新のゲーム機やらスマホを買ったりするヤツがいるのは事実で、今回の受給カットを私は支持する。とはいえ、もちろんそんなええ加減な受給者ばかりでないことを留意しつつ、なんでもかんでも生活保護受給者を叩くという風潮は改めなければならず、叩いたところで何も貧困問題は解決しないことを肝に銘じなければならんでしょう。
予期せぬアクシデントで誰しもが「受給者」の立場になり得ることを踏まえたい。