ROCK CD & DVD BUYER'S GUIDE III

一応、風景写真がメインです

クイーン・映画「ボヘミアン・ラプソディ」の評価が高い理由


20th Century Fox 1994 logo with Bohemian Rhapsody Fanfare

映画「ボヘミアン・ラプソディ」の冒頭、20世紀FOXのファンファーレが上の動画です。最初、いつもと音が違うし、けったいやな??と思っていると、後半、ギターがギュイ~~ンと壮大に奏でられ、「これ、ブライアン(Gr)のギターやんけ!!」と映画の本編がまだ始まってない時点でガツンと一発喰らってしまいましたわww

そう、この映画は冒頭のファンファーレの粋な計らいがすべてを表すように、映画評論家には賛否両論あろうが長年のクイーンファンにとっては心の琴線に触れる演出が随所に織り込まれているのです。

クイーンは70年代後半が全盛期ゆえ、コアなファンはすでに50代から60代になっておられます。
私も一応リアルタイムでクイーンを体験した世代ですが、80年代に入ってからなので既にクイーンはピークを過ぎてました。
映画でいうところのフレディ・マーキュリー(Vo)がソロになる云々でもめてたころです。
世界の音楽業界の4%(?だったかな?)をマイケル・ジャクソン1人が稼ぎ出していることを引き合いにCBSからフレディにソロを持ちかけたと映画のなかでありましたが、私はクイーンの長年のファンであってもそれほど裏事情とか詳しくなかったので、そこまでCBSから三顧の礼でフレディを迎え入れたとは全くの意外でした。
先程もいいましたように、当時ガキンチョだった私からしても「クイーン」というより、「フレディ」の全盛期は完全に過ぎてたからです。

私もそのソロアルバムは買いましたし、日本では「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」が化粧品かなんかのCMで採用されて多少話題になったものの、まぁ私にとっては今ひとつの内容でした。大方のクイーンファンもそうだったでしょう。

映画でもフレディはソロになって改めてバンドの大切さを知り、メンバーに再び一緒に活動させてくれと懇願するシーンがあります。
ソロでレコーディングをしても周りは自分の言いなりで誰も意見を言わないと。
私が「バンド」という形態で活動をしているアーティストが好きな理由はこれなんですよねぇ。やはりバンドのメンバーそれぞれの主張や個性がぶつかり合うのでバンドというのは緊張感のなかでいいものが生まれるのです。それはビートルズポール・マッカートニージョン・レノンが典型例でしょう。オノ・ヨーコが現れたあとはビートルズの中で険悪な雰囲気となっていきますが、それでもお互いの存在を意識することで解散するまでいい楽曲を生み出し続けました。

クイーンもフレディのみならずクイーンのメンバー全員が優れたコンポーザーだったので、お互いの存在によって楽曲が2倍にも3倍にも良くなったことは間違いありません。
ちなみに映画の中で「オペラ座の夜」のアルバム製作中に「 I'm in Love With My Car」を作曲したロジャー・ティラー(Dr)がブライアン・メイにその曲を馬鹿にされて大喧嘩になるシーンがありました。
クイーン全盛期、唯一作曲能力が他のメンバーより劣っていたのがロジャーだったのですが、これがえらいもんで、80年代に入ってフレディの作曲能力が劣っていくのと逆行してロジャーの作曲能力が高まっていきます。
後期のクイーンを支えたのはロジャーといっても過言ではないかと。
そしてクイーンはジョン・ディーコン(B)含めメンバー全員が全米、もしくは全英チャート1位の楽曲を作曲した経験がある稀有なバンドだったということになります。

映画の中ではフレディのクズな面も描かれてますが、映画全般を見てもらえれば彼が心根のいい人間であり、大きな間違いは犯してないことは分かるかと思います。
少なくとも私たちクイーンファンに対して彼は本当に真摯であったし、素晴らしい人柄だったと言えます。
またこの映画を見るまでマイノリティに対する差別の経験や容姿への中傷、孤独感を味わっていたとは知りませんでした。

この映画のなかで唯一事実とは大きく異なる点、それは85年のライブ・エイド前にメンバーにフレディが自身がエイズになったことを告白する場面です。実際の告白は87年とされています。ですが、この辺はクイーンファンにとってすら些細なことでしょう。
映画のラストをライブ・エイドに持ってきたのもいい脚本だと思いますし、そのためにはライブ前に告白させる場面を持ってこなくてはならないからです。
ライブ・エイドでは実際は持ち時間20分の公演だったわけですが、映画でも15分前後くらいはこのライブの再現に時間を割いてます。
どこまでCGなのかどういう撮影になっているのかサッパリわかりませんが、ウェンブリー・スタジアムに7万人以上の観客が詰めかけてクイーンの公演に盛り上がるシーンが見事に再現されていまして、その感動に自然と涙腺が緩んでしまいました。
メンバー役をされてるそれぞれの役者さんは普段の風貌はクイーン本人たちとは似ても似つかない感じみたいですが、本当にこの映画では違和感が殆どなく、特にライブ・エイドのシーンのブライアンについては当時の本人が立ってギターを炸裂させているのかと錯覚するほどの激似でした。これについてはこの映画のシーン撮影時に舞台袖にいたロジャーとブライアンもフレディとブライアンの完コピぶりにビックリしたようです。

最初に触れたようにクイーンをリアルタイムに体験した最後の世代であろう私はガキンチョでありながら友人たちと85年に大阪城ホールに行き、クイーンの事実上日本のラストライブに立ち会ってます。
少なくとも日本におけるクイーンの全盛は過ぎてたので、観客は全盛期を知る20代30代以上ばかりでライブ会場の最年少が私たちだっと思われます。
あれから30年以上が経過した今、映画館とはいえ再びクイーンを大音量で、あたかもクイーンの聖地であるウェンブリーにいるかのような体験をさせてもらったのはホンマ有り難い話です。

今回の映画は最高の音質を求め、わざわざ京都の二条まで行ってIMAXにて鑑賞しました。
もし可能であればやはりIMAXでこの映画を体験したほうがいいでしょう。
やはりこの映画の場合は通常より400円高額であるIMAXの席が結構売れているといいます。
IMAXは無理でもやはりどうせ鑑賞するなら是非とも映画館で鑑賞していただきたい作品です。

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TOHOシネマズ二条にて。


映画の冒頭でクイーンの前身バンド「スマイル」のヴォーカルが脱退し、追っかけをしていたフレディが「俺をヴォーカルに採用しろ」と言わんばかり、スマイルのロジャーとブライアンの前でスマイルの持ち歌を歌い始め、三人でハモる「Doing All Right」からはじまり、ラストシーンのライブ・エイドの「We Are The Champions」までクイーンの楽曲が大音量で流れる度に鳥肌が立ちっぱなしでした。

クイーンファンの大半は納得いくであろう映画ではありますが、クイーンに興味ない人にとっては当然敷居は高いでしょう。
しかしながら、この映画は観客動員が1週目⇒2週目⇒3週目と全く劣っていない異例の動きを見せているらしく、クイーンファン以外を巻き込んでるのは間違いなさそうです。ちなみに私が二条に見に行った時も映画の日で安かったこともありますが公開から3週目にも関わらず満席でした。
クイーンをよく知らない人にとっても惹きつけられるものがこの映画にはあるのかと。

それはクイーンの音楽性がクオリティが高いのみならず知らない人にも非常にとっつきやすい点と、フレディという強烈なキャラクターと破天荒かつ壮絶な人生がストーリーとして惹きつけられる点、クイーンのメンバーひとりひとりが実直で好感が持てる点もあろうかと思います。もちろん、それらをうまく映画で表現されているからこそです。
もし仮にメンバーの中にクズがいたり、メンバーが脱退なんかでコロコロ変わったりすればストーリーもとっちらけになってしまいます。解散の危機を迎えながらもクイーンとしてメンバー4人が「家族」を最後まで維持できたことは本当に大きい。

監督が完成前に降りるなど相当な紆余曲折があった映画のようですが、その完成度はそれらゴタゴタを感じさせない迫力と演出があります。
凡作ではなくこのレベルの映画を生み出してくれたことにクイーンファンとしては感謝しかありません。

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