[昭和の歌姫]ちあきなおみの最新アルバム「微吟」と「紅い花」
2019年の春にリリースされたベスト盤「微吟」ですが、こんなベスト盤が出ていたとは露知らず、先日Amazonで見つけて即刻購入しました。
ちあきなおみは活動時、レコード会社を数回変えていってるのでなかなか適当なベスト盤がなかったんですわ。因みにちあきなおみの楽曲はiTunesなどではリリースされてません。CDを買うしかないんです。
このベスト盤ですが、私は有名曲しか知らんので選曲がベストかどうかは分かりませんが通の人たちのレビューがいいので恐らくいいんでしょう。ジャケットもピンクが基調でいい感じです。
「微吟」とは「小さな声で、口ずさむように詩歌を吟ずること」を言うらしいのですが、確かにちあきなおみは喉をフルに使って大声量で歌うタイプとは程遠い。
叙情歌こそ彼女の魅力が発揮できる楽曲といえるでしょう。
正直なところちあきなおみがまだ活動していた時、私はその歌の良さなどさっぱり分かってませんでした。邦楽をあまり聴かない私でも「喝采」くらいは知ってましたが、コロッケなんかのモノマネネタのイメージが強すぎてレコード大賞を取ってたことすら知ったのはだいぶ後の話です。そしてちあきなおみとして強烈なイメージがあったのは90年前後のキンチョーのテレビCMで美川憲一との「もっと端っこ歩きなさいよ」。歌手というよりなんか面白いそうなおばさんって感じでした。
その余計なイメージが払拭されたのが彼女が活動休止してからだいぶ経ってCMに使用された「星影の小径」「黄昏ビギン」でして、私と同じような人も多いはず。
このベスト盤に収録されている曲の数々はほんとバラエティに富んでいて、一人芝居風の「ねえあんた」、メインは叙情歌でありながら、曲の途中で昔のレコード風にモノラルのタンゴに数回切り替わる面白い演出の洋楽カバー「すり切れたレコード」、そして演歌では「矢切の渡し」も。これについてはエピソードがウィキに書いてました。
元々はこの曲はシングルB面曲だったんですが、梅沢富美男が舞台で取り上げたことで注目されて再リリースすることに。しかし当時ちあきは別のレコード会社に移ってたことなどの理由で細川たかしが同曲をカバーしてリリースすることが決まり、そのタイミングでちあき版は廃盤となったそうです。細川たかし版はミリオンを記録してその年のレコード大賞も獲得したわけですが、有線ではずっと廃盤になったちあき版が1位だったとのこと。細川版とちあき版、それについて同曲作曲者の船村徹の興味深いコメントです。
「なるほどねえ、いいところに目をつけるなと思ったよ。ただ、歌っている姿がおよそ見当もつかない。美声ではあるが細川君の歌い方は一本調子な感じで、ちあき君は観賞用‥細部まできっちりと聴かせる歌だから。正直に言うと細川盤は、楽曲の難しい部分を省略しているので『何だ、これならオレにも歌える』と世間に思わせる歌い方でしたね」
92年に最愛の夫を亡くしてから事実上の活動休止となるちあきなおみですが、彼女の楽曲は「喝采」をあげるまでもなく、最愛の人を失ったことを歌う曲が多く、実際にその立場になってしまって歌えなくなったということもあるのかもしれません。
それにしてもこないに時代を超越して愛されるアーティストは日本では稀有な存在でしょう。
そしてこの人は収録された歌もいいですが生歌が本当に素晴らしい。
最後にYouTubeで上がってた生歌の「紅い花」をリンク付しておきます。
もちろん、「微吟」にも収録されてます。因みにこのベストアルバムですが2019年のレコード大賞で企画賞を獲ったとのことです。