ROCK CD & DVD BUYER'S GUIDE III

一応、風景写真がメインです

憲法の日:憲法改正と96条

護憲派メディアである毎日新聞の余録(5/3掲載)からその概要を引用する。

1946年、日本の新憲法の草案づくりを行なっていた占領軍だったが、その作業の3日目、それまで上官に従順だった若い将校たちと作業を指揮していたケーディス大佐の間で、ある項目をめぐって論争が巻き起こったという。
その項目は憲法改正の手続きだった。

若い将校らは「10年間の改憲禁止条項」と「改正には国会の4分の3の承認を要する」という案を押していた。「日本国民には民主主義の運用がまだできない」という理由からで、日本人は安易に改憲をやりかねんという危惧からだった。
しかし、大佐は「後世の国民の自由意志を奪ってはならない」と主張、激論の末に「国会の3分の2の発議要件」に至ったという。



さて、私はそもそも戦後の短期間に作られた憲法を必要以上に上げ奉るサヨク連中の言動に疑問を感じ、憲法改正に「国会の3分の2」を必要とした96条改正を断固守ろうとするのも単に9条を守りたいがためであって、自己中心的な考えとつい先日まで思ってたおりました。
ところが、ある人の発言が先日紙面に載っていて、考えがコロっと変わってしまいました。(たったひとりの発言で180度変わるのも私自身に問題がありそうですがw)

それは慶大教授の小林節氏のもの(同じく毎日新聞に載ってた)だったんですが、彼は96条改正に断固反対する立場なのですが、かといって護憲派ではありません。改憲派・・・特に9条を変えるべきという保守派でありながら、改憲のハードルを下げることに反対していらっしゃるんですな。

彼は以下のように言っております。
「権力者も人間、神様じゃない。堕落し、時のムードに乗っかって勝手なことをやり始める恐れは常にある。その歯止めになるのが憲法。つまり国民が権力者を縛るための道具なんだよ。それが立憲主義、近代国家の原則。だからこそモノの弾みのような多数決で変えられないよう、96条であえてがっちり固めているんだ。それなのに……」

占領軍の若い将校が言ってた「4分の3」というハードルはさすがに高いものの、「3分の2」が果たしてホンマにそないに高いかということです。
占領軍が最終的に「3分の2」としたのは自国・・つまり米国の数字を参考に当てはめたもの。
米国は戦後6回の憲法改正(修正)をしてきたらしいのですが、連邦議会の上下両院の3分の2以上の議員が賛成すれば改正が提案されるらしい。そして更に全米50州のうち4分の3の議会での批准が必要で、小林氏は「日本より厳しいんだ」と述べております。

例えばついこの間まで民主党という変な党を国民は与党にしてしまってたわけですが、ああいう一時期の勢いで湧いたような変な党が仮に変な憲法改正案を出したとする。それが国会の過半数というハードルを乗り越え、大多数の国民がその変な改正案に興味がなくて投票にいかなかった場合、特定の団体だけが投票に行って賛成が過半数を超えてしまう・・という事態も起こりえるかと。

国会の過半数というのは普通の法案と同レベルのハードルであって、憲法改正という日本の根幹に関わる事案をそんな低いハードルでいいのか・・ってな疑問が保守派からの指摘で初めて私も湧き始めてきましたわ。
私は96条改正阻止の動きを「3分の2を維持する主張は左派が自分の少数意見をひっくり返されるのを阻止するための傲慢」というような変な色眼鏡でこれまで見てたようです。
本当に真っ当な改正案なのであれば、米国と同様、国会の3分の2のハードルを突破し、国民の過半数の信任も獲るはず。それができないってことはその程度の改正案ということです。

毎日新聞の最新の世論調査によると、憲法改正に賛成する人が60%に対して、反対はわずか32%で大きな差があいている。・・・が、96条の改正については賛成が42%に対して反対は46%という結果が出ています。
今元気のいい安倍首相をはじめとした保守派やウヨク連中に流されていた私と違い、多くの国民は真っ当な考えをもっておられるようで、正直、この数字では96条の改正は厳しいものになるでしょうな。

安倍首相も96条改正を「憲法改正の突破口」として心血を注ぐのではなく、いきなり「各条文の改正」という本丸から攻めたらいいんじゃないでしょうかね。もちろん、国会で議論を重ねて国民にそれらを説明した上での話ですが。

憲法は絶対触ってはいけない」ものでもなんでもなく、時代にそぐわない箇所などは修正すべきですが、冒頭に申しましたとおり、「ガイジンが短期間で作成した草案を土台にしたもの」であるがゆえに、そんな胡散臭いものは当然ドンドン改正すべきというのは真っ当な考えであって、それが自民党の結党以来の悲願だったはず。
しかし実状は戦後70年を過ぎようとしているにも関わらず、これまで改正論議が国民の間のみならず、自民党議員の間ですらイマイチ盛り上がらなかったというのも何とも不可解。

つまり、もしかしたら、ガイジンが短期間で作った憲法が実は現時点で殆どいじる必要がない奇跡的な憲法だったかもしれないという可能性もゼロではないわけで(正直、自民党の草案なんかを報道で見る限り「??」というのがチラホラある)、保守派はそういう可能性も踏まえつつ、右派左派交えて精査すべきじゃないでしょうかね。

国会の3分の2すら賛同できないような草案なら、今のガイジン作成の憲法のほうが格上ということです。