ROCK CD & DVD BUYER'S GUIDE III

一応、風景写真がメインです

三陸沖地震:NHKの逼迫した避難呼びかけと正常性バイアス

ワタシは昨日の夕方は外をウロチョロしてたんで、地震発生の時はテレビは観てなかったのですが、報道によると、NHKをはじめ各局は強い調子で沿岸部の方の避難を呼びかけたとのこと。
 
特にNHKでは『画面上に赤枠内に白抜き文字で「津波!避難!」と大きく表示。アナウンサーが「東日本大震災を思い出してください」「命を最優先にしてください」などと切迫した口調で避難を呼びかけた』産経新聞)とあります。
 
NHKでは東日本大震災を教訓に津波の可能性が発生した場合などにおいて、どうすれば避難を促すことができるのか、その放送のあり方を模索しております。
先日、その予行演習の風景を流していましたが、NHKニュース7でおなじみ、「たけたん」こと武田(たけた)真一キャスターのその凄みのある呼びかけは予行演習とはわかっていても怖くなるくらいの説得力があり、2chの実況でも皆が度肝を抜かれてました。さすが、NHKのエースたけたん!といった感じでした。
 

 
東日本大震災では、地震発生から津波が来るまでの間、釜石市の小中学生たちが大活躍したことがよく報道されています。
当時、大人たちは「どうせ津波なんかこない」と避難する気などサラサラなかったような者が多い中で、普段から授業で津波の恐ろしさを学んでいた小中学生たちは自分の家族を必死で避難するよう説得し、高い場所へと誘導させました。また中学生は小学生の手を引いて避難するなど、素晴らしい連携を発揮しました。
あれだけの壊滅的な被害を受けた釜石市で、釜石市内の小中学生の生存率は99.8%です。
この生存率は「奇跡」でもなんでもなく、小中学生が自ら行動を起こしたことによるものです。
今回の震災ではその行動次第で救えたかもしれない命が多くあったことは間違いありません。
 
 
阪神大震災発生時、ワタシの家族は全員自宅にいました。
家の中が家具が倒れたり、食器が割れるなどしてグチャグチャになった中、ワタシが真っ先に行なったのはは玄関を開けての避難経路の確保。当時団地の5階に住んでいたため、この鉄扉が余震などで開かなくなると、家から全く出れなくなってしまうためです。
 
そして、余震による倒壊などを危惧して、すぐさま家族に家から出て広場に行くように説得するも、「大丈夫やって!」「寒いし」と、全く出る気配なし。
仕方なく、ワタシ一人が団地の階段を降りて広場に出るも、うちの家族と同じく各棟から誰も避難する人はいませんでした。
強い余震も全然なく、結局また自宅に戻った次第で、「寒い」という理由で鉄扉はキッチリ閉められていたのでした。
結果としてはウチの無精の家族が正しかったわけですが、これはあくまで結果論です。
 

 
認知バイアスCognitive bias)のひとつに正常性バイアス(Normalcy bias)というのがあり、最近やたら耳にすることがあると思います。Wikiには以下のように記されています。
 
自然災害や火事(山火事、放火など)、事故・事件(テロリズム等の犯罪、ほか)などといった何らかの被害が予想される状況下にあっても、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」などと過小評価したりしてしまう人の心の特性。「正常化の偏見」、「恒常性バイアス」とも言う。
 
この正常性バイアスが避難とかの妨げになるわけですが、その中でもありがちなのが「多数派同調バイアス」(majority synching bias)です。
 
例えば、1つ目のパターンとして何も知らない被験者をひとりで閉鎖した部屋に待機させ、そこに煙を流し込みます。
その場合と、今度は見知らぬ被験者たち数人を同じように閉鎖した部屋に待機させて、煙を流し込みます。
この2つのパターンでは人間の行動が異なります。
 
一人の場合はオロオロして部屋から出ていきます。普通ならばこれがとるべき行動といえるでしょう。
・・が、人数が多いと、異変を感じながら誰も微動だにせず、煙が充満しはじめてもなかなか行動に移さないという心理が発生します。
よくわからない事象が発生した時、周りの行動に影響されてしまい、結局は誰も動かないのです。
 
これが如実にあらわれた典型的な事故が2003年2月に韓国・大邱市で発生した地下鉄放火事件です。
地下鉄の車内で煙が充満していくなか、逃げるタイミングがいくらでもありながら多くの乗客が逃げ出そうとせず、200人以上が死亡しました。
 
 
「オロオロするのはかっこ悪い」とか「何事にも冷静に」なんてのは愚かな話で、我々はもっと自然とか未知の現象とかに「畏怖の念」を抱くべきで、人間は怖がりくらいがちょうどいいんです。
 
 
 
NHKの今後の災害に対する姿勢の現れとして、たけたんの今年(今年度?)冒頭のメッセージを紹介します。
 

 
放送は命を救えるか―この1年、ずっと考え続けてきました。

わずかな時間に、命を救えるかもしれない条件。
それはまず、地域に住む人々の日頃の備えがあること。
そしていざという時に、的確な情報と「ことば」があることです。

命を救うことばは、単に情報を伝達するだけでは十分ではありません。
それによって人々の心を動かし、避難などの行動を促すことができなければなりません。そこまでやらなければ、命を救う放送にはなりません。

私たちがニュースを届けることで、人々の心が動く。社会が変わる。
そう信じる心を持ち続けながら、また1年、頑張っていきます。
よろしくお願いします。
 
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NHKのエース、2chで人気者のたけたん

 
そして最後に、あの史上最強の人物の正常性バイアスを否定したともいえる(?)セリフを紹介して終わります。
 
 
「俺はものすごく臆病者なのだ。だから生きてこられたのだ」
                                                 by ゴルゴ13